人通りが消えた繁華街

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 残念ながら、姉の部屋のクローゼットは空っぽだった。まさかと思って、両親のクローゼットも調べたがこちらも空。三人ともどうしたのだろうか。 「交番へ行って事情を説明すれば、お金を貸してくれるかしら?」  家の鍵もどこかへ消えてしまっていたので、仕方なく、戸締まりもせずに遠出をする。不用心なのは不安で仕方ないが、やむを得ないと割り切り、繁華街にある交番まで駆け足で向かう。  走ったり、立ち止まって膝に手を当てて呼吸を整えたり。それらを交互に繰り返していて気づいたことがある。  途中で誰にも出会わないのだ。いつもなら、夜中でも何人かとすれ違うのだが。
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