赤い猫

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 足を棒にしても目的は果たせず、近くに見えてきた公園のベンチへ向かい、体を投げ出す。周囲の木々も子ども向けの遊具もすっかり変わっているが、もうそんなことに驚くのも飽きた。  時計がなく、腹時計も怪しいので時刻は不明だが、もう0時を回った頃のはず。虫がいない防犯灯に目をやり、照らされた花々や芝生に目を移す。 「植物は生きているんだ……」  完全に機械だけの世界になっていない証拠を目にして、冷え切った心が和らぐ。  夜空を見上げると、星も月も隠れた曇り空。今の気持ちにぴったりだ。ここで雨でも降ってくれれば、今の虚無感を洗い流してくれるだろうか。  そんなミユの願いが通じたのか、ぽつりぽつりと雨が降り出した。
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