5人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
無人の地上
ミユは、この赤猫の言葉を聞いて首を傾け、失笑した。
「やーねぇ。何、笑ってるのよ」
同じく首を傾げた猫の疑問には答えず、彼女は自分の頬を思いっきりつねって、これは夢であることを確認しようとする。だが、痛みを感じるし、目の前の光景に何ら変化はない。しきりに落ちる雨粒も冷たい。
――これは、現実だ。
「とにかく、今起きていることを説明するわね。ここじゃ濡れるから、あっちのコインランドリーへ行きましょう」
そう言って走り出した赤猫の姿をミユは少しの間眺めていたが、雨脚が強くなってきたので、慌てて後を追いかけた。
最初のコメントを投稿しよう!