人通りが消えた繁華街

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 顔を上げたミユは、壁に掛かったリクルートスーツ、床に置いたバッグ、脱ぎ捨てたタイツへ順繰りと目をやる。 「明日は、AI関連のベンチャー企業Z。初心者歓迎って言うけれど、本当に大丈夫かしら……」  不安で溢れ出てくる心の声。 「門前払いじゃないから、いいわよね……」  自分で自分に同意を求める独り言。  今の不安な気持ちを落ち着かせるにはこれしかない。彼女は『うん、大丈夫』と言葉をかみしめる。  締め切ったカーテンの向こうから時折車が通る音や足音が耳に届くが、それらがなくなると室内は静寂で満たされる。  ジッとしていると、鼓膜が揺れてもいないのに頭の中では一定の周波数の音が聞こえていて、心を大いにかき乱す。  そんな不愉快な耳鳴りに耐えていると、胃袋が不満を訴えて、唸るような音を(はばか)ることなく響かせた。
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