人通りが消えた繁華街

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 闇の底に意識が沈んでいたミユは、振動を伴う低音が体を叩くのに気づいて目が覚めた。  薄目で瞬きしている間に、この低音がヘリコプターの飛行する音であるとわかった。  それにしても、飛行音が長い。近づいては遠ざかるが5度目だ。 「こんな夜中に近所迷惑。何時だと思ってるの?」  丸時計を見ようと顔を上げるが、真っ暗である。 「そういえば、いきなり電気が消えたわよね?」  手探りでベッドサイドライトに手を伸ばし、スイッチを入れ、ボンヤリと明るくなった光で丸時計の方を見る。しかし、そこにはデジタル時計がかかっていた。  ボンヤリした数字を目の焦点を合わせて見てみると、22時ジャストになっている。倒れる前は23時より前だったのに。  時間が過去に向かうはずがない。ということは――、 「キャッ! 寝過ごした!?」  面接をすっぽかしたと思った彼女は顔面蒼白になり、ベッドから跳ね起きて辺りを見渡すと、スーツ、バッグ、タイツがない。机はあるが、その上にあったパソコン、モニター、腕時計、スマホまで見つからない。  片付けたはずがないのに、真っ暗になった途端、忽然と消えたのだ。 「ここはどこ!? 私の部屋なの!?」
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