人通りが消えた繁華街

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人通りが消えた繁華街

 ミユは、就職活動真っ最中の短大生。IT系に興味があり、人手不足で採用が多い会社を精力的に回っているが、ことごとく落ちている。今日も「慎重に選考いたしました結果、まことに残念ながら~」と見慣れた言葉がある通知を受け取って、ため息を盛大に吐く。  通知が来た会社は、それまでの失敗を踏まえて全力で臨んだ面接が最高の出来で、面接官と大いに盛り上がり、凄く嬉しかった。今度こそ99.9%大丈夫と期待も大きく膨らんで、残りの会社の面接をやめようとさえ思ったほど。  これはもう天国から地獄へ突き落とされた気分。  高をくくっていた罰にしては、残酷すぎる。  まさか、就職活動に於いて非常識な行動や不適切な発言をしているにも関わらず、それに気づいていないのか。  ――これは大いに問題である。  でも、どうやって気づけばいいのかがわからない。そう思うと、気分が一気に落ち込んで、無気力がたちまち全身を包んでいく。  よりにもよって、両親も姉も、神経がピリピリしている末っ子を邪魔しない名目で温泉旅行に出かけていて、明日帰ってくる予定。今こうして膝を抱えて尻で床を温め落ち込む自分を慰めてほしいのに。  目だけ上げて、壁に掛かった丸時計を見る。もうすぐ23時。秒針は0を指したまま動いていない省エネモードに移行していて、時が止まったかのように思えてしまうが、長針がカクンと右回りに進むので、一歩一歩明日に近づいていることを実感させる。  明日も面接だが、連戦連敗の自分には希望の光が見えない。()()()姿()として見えるのは、またこうして膝を抱える自分。膝頭に押しつけて揺らす額が熱を帯びてくる。 「どうしよう……」
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