無人の地上

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無人の地上

 ミユは、この赤猫の言葉を聞いて首を傾け、失笑した。 「やーねぇ。何、笑ってるのよ」  同じく首を傾げた猫の疑問には答えず、彼女は自分の頬を思いっきりつねって、これは夢であることを確認しようとする。だが、痛みを感じるし、目の前の光景に何ら変化はない。しきりに落ちる雨粒も冷たい。  ――これは、現実だ。 「とにかく、今起きていることを説明するわね。ここじゃ濡れるから、あっちのコインランドリーへ行きましょう」  そう言って走り出した赤猫の姿をミユは少しの間眺めていたが、雨脚が強くなってきたので、慌てて後を追いかけた。
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