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エピローグ
翌日の午後、Z社の本社があるビルの前で、リクルートスーツ姿のミユが期待に胸を膨らませて立っていた。これから採用面接に臨むのだ。
晴天の下、彼女は額に手をかざし、コバルトブルーをバックに白く輝く太陽に目を細める。
(あそこに滅赤色の点が突然現れて、大きくなっていく……)
彼女は、マリリンと研究所へ行った時のことを思い出す。
部屋の壁に向かってマリリンの目からプロジェクターのような光が投影され、そこに映し出された太陽の拡大図には、暗くて赤い点が大きく映っていた。マリリンは、これを滅赤色の点と言った。この点が拡大し、いずれ太陽全体がその色に染まるのかと思うと身震いがした。
ミユはマリリンとしばらく語り合った後、タイムマシンを起動してもらい、揺れと目眩を感じながら過去へ戻ってきた。なお、過去から未来への行き方は「夫に教わったら?」とはぐらかされたが。
過去に戻ったミユは、一睡もせず、未来について考えた。
Z社で自分が就く仕事のこと。社内で出会う未来の夫のこと。自らの手で作るマリリンのこと。
自分はめざましい活躍をして順風満帆の人生を歩むのだろうが、悪夢のような出来事がすぐにやってくる。
太陽の異変で世界中に伝染病が蔓延する。自動運転で生活が便利になるはずのシステムが突然暴走する。
マリリンは、システム改修後に医療関連部署へ異動すればいいと言った。
でも、太陽の異変が確実に起こることを知ってしまった今、システム構築よりも医療を優先すべきだ。
「やはり、AIを応用した医療関係が第一志望ね」
ミユは、そう心に決めて大きく一歩を踏み出す。
――この決意が別の未来を作ることを彼女は知らない。
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