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第3コーラス目「告白!」
「いいよ! どこに付き合えばいいの?」
真湖はさらりと言った。翔は一瞬固まる。
「あ、いや、どこにって。……俺と付き合ってって言ったの。つまり、君がカノジョで、俺がカレシ。コイビトってこと。わかる?」
「カノ……ジョ? コ イ ビ ト……?」
真湖の顔がみるみるうちに紅くなった。
「マジ? 今のって、告白?」
「さすがハーフ、ススんでるよね」
「でも、なんであんな子?」
「わたし、超ショック。結構気になってたのに」
クラスの中が瞬く間にざわめき始めた。
「そうそう。コイビト。俺は、君が好きなんです。付き合ってください」
翔は満面笑顔でそう良いながら、真湖の手を振り続けた。
「えー!?」
真っ赤になった真湖は、翔の手を思いっきり振り払って。
「無理、無理、無理、無理、無理、無理!」
と、翔を両手で突き飛ばそうとした。が、その両手は翔にしっかり掴まえられていた。
「どうして無理?」
「だって、昨日今日初めて会ったばかりで、全然知らないのに」
「俺は知ってるよ? 煌輝真湖ちゃん。合唱が大好きで、合唱部つくる。放送室占拠して叫んじゃう。で、ポニーテールの似合う女の子。違う?」
「そういうことじゃなく、中身の問題でしょ?」
「中身はお付き合いしながら、わかり合えばいいじゃないか?」
と、二人で押し合いへし合いしているところに、横から力強く翔の腕を引っ張る者がいた。
「おい、いい加減にしろ!」
さっきひっくり返った阿修羅だった。
「嫌がってるじゃないか、止めろよ!」
「剣藤くんか。君は関係ないじゃないか。カレシじゃないんだろ?」
「いいや、関係大アリだね。こいつは、『一応』俺の幼馴染みだからな。腐れ縁だけど。本人が嫌がってんだから止めるだろ、ふつー。男子女子関係なく」
「へぇ」
翔は挑戦的な目つきをした。阿修羅もそれに目で応え、身構えた。一発触発のところで、
「はいはい、みんな、席についてー」
と、間延びした声が壇上から聞こえた。担任の英美佐恵先生だった。
「ほら、そこ、固まってないで。みんな席についてよー」
事情の分からない担任はただ、生徒達が固まってじゃれ合っているとしか見ていなかった。
「はいはい、もう小学生じゃないんだからねー」
昨日の入学式の指導教員の言葉をそのままオウムのように繰り返した。生徒達は蜂の巣をつついたように、それぞれに自分の席に戻った。阿修羅も舌打ちして、自分の席に戻った。
「じゃあ、また後でね」
翔は、飄々とした風で真湖にそう残して、やはり自分の席に着いた。
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