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事務室から傘立てを手にして、店の前に設置する。傘用の細長いビニール袋もその脇に置く。
念のため、プラスチックを二つ折りにして畳める、『雨なので、床が滑りやすくなっています』の注意看板、も店頭近くの通り道に置いた。
「雨はやること多い」
店長はぶつぶつ言いながら、店内入ってすぐに、目立位置に百円傘と百円レインコートを移動させる。
パワーセンターで隣は唯一の空きテナントだ。埃で汚れた閉じられたままのシャッターは、雨が黒い涙のように流れていた。
シャッターに貼られた後援会ポスターがある。地元選出国会議員の写真は、雨に打ちつけられても、笑顔だ。
腰に手を当て、北登自動車のディーラーを見つめる。ディーラーの開店時間だ。店員や警備員が、頭を下げている。列を成す車をディーラー専用駐車場に、順次案内している。
パワーセンターの駐車場には、シルバーの軽自動車が見える。百円ショップワンコイン富久亜店にも、仕入れ用の軽自動車がある。中古で買った箱型の軽バン車、北登自動車製だ。
店に近い、出しやすい角を借りてある。客にいやらしいので、店名は文字入れしていない。
「うちも開店!」
店長がエアコンを片手に、店内の明かりが一斉につく。エアコンも設定温度は、省エネ運転で入れた。
軽妙なBGMが流れ、店長がレジカウンターに立つ。朝早くは店長一人シフト。残りの従業員はバイト、パートさんだが、昼や午後しか来ない。
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