第一話 思い立ったが吉日

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第一話 思い立ったが吉日

 午前十一時、ナオキは自宅のマンションのベッドに寝転がりスマホをいじっていた。起きたのは十時で一時間ずっと生産性のない時間を過ごしている。ああ、なんにもやる気が出ない。  二週間前に仕事をやめた。  高卒で入社して4年間務めた会社だった。地方のリゾートホテルを十数個運営する企業で、ナオキは朝から晩までホテルの部屋や大浴場の品質維持、品質向上のため馬車馬の如く汗水垂らして働いていた……厳しい上司の無理難題と言える条件をこなすため石鹸1つを十円安くしてもらおうと遠方まで出向いて床に届きそうなほど頭を下げたこともある。  勤務中の苦労話は挙げればキリがないその会社をミスしたことを機にいっそこのままとやめてしまった。俺がやめれば仕事が回らなくて大変だろ、そう心の中で思いながらやめることを告げたが、あっけなく人が余っている部署から二人が異動してナオキが抜けたことで空いた穴は埋められ、聞くところによると問題なく仕事は回っているらしい。
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