第三十七話 すくみあがった

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 広がる黒色――その先には空間の終わりがあった。  錆びた柵の前で急停止して、開いたドアを閉める。どうやら施設の外、非常階段に繋がるドアだったらしい。外側に窓が無いコンクリートの施設の中に居たので時間の感覚はなかったが今は夜のようだ。  例にもれず、空間の境界線の向こうには果てしない黒があって、見たくない光景にめまいがしそうになる。  けど、これは運が良い。階段に辿り着けた。このまま一気に8階にだって行ける――  崩れないか心配になるボロの非常階段の上、金属と靴がぶつかる音が上へと進む。階段の隙間から見た下では、開いたドアから出てきたクロビト達が狭い通路で詰まっていた。  よし。いける。逃げきれる。ルナ……彼女は嘘をついていたのだろうか。それとも正常な思考と異常な思考が混ざり合った二重人格の霊だったのか。真相は分からないがルナが消えて攻撃してきた女がルナと名乗ったのならこのまま1人で出るしかない――  今の状態で消えたルナを探す余裕がナオキにはなかった。ひたすら危険から遠ざかりたかった。  釘を打たれているようにズキズキと痛む二の腕から流れる血は指先から流れ落ちる中、3階、檻があった4階を越えて5階まで上りきる。息切れして、もう体力もかなり消耗した――  次の瞬間、5階の非常口のドアが開く―― 「こっちに入って!」  現れたのは金色の髪の女だった。しかし、その表情は地下で一緒にいた頃に戻っていた。 「早く!来てる!」  ルナはそう言って戸惑うナオキの服を引っ張って5階の廊下に連れ込んだ。同時に頭のすぐ後ろで風を切る音がする。  どこから出てきたのかすぐ後ろに黒い服のルナがいた。白いルナが引っ張ってくれなければ頭に鋭いガラスが刺さっていた―― 「急いで!」  ナオキは訳が分からないままルナについて行って一つの部屋に二人で逃げ込んだ。
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