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第三十九話 多難
いつも予想外から現れる……不意を突き、狭い部屋でナオキを捉えた目はときめいた乙女のそれのように輝いた――。
黒いルナは唇を閉じたまま口角を上げると、歩くように自然に殺しを始めた。ナオキに向かってさらなる傷を負わせようと腕を回す。
「こっち!」
部屋の壁まで後退したナオキを数秒の間にハッチに付いた扉を持ち上げたルナが呼ぶ。
「入って!」
ナオキは走り出して滑り落ちるように梯子を使わずに穴に入った――落ちた先の着地点は鉄の棒が落ちていて態勢を崩してしまう。
「きゃあ!」
悲鳴に振り向くと、ルナも穴とは少しずれた場所から顔を覆いながら降ってきて、顔を覆ったまま床に辿り着く。
「大丈夫?」
男の自分が先に逃げてはダメだった。ルナもあの黒ルナから攻撃を受ける対象なのかは確かではないが恐怖はあるようだ。
「大丈夫。それよりも早く」
ルナが言いながら指を差す。立ち上がり向き合う四階――そうだ。そういえばこの階は――
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