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第四十話 計られた
「もーとっ。よーく顔を、見せてっ」
下の階段に落ちたコンクリートの小さなかけらも転がるのをやめて止まった時に、黒ルナが上の階から下の階段に飛び降りて、笛で演奏していたものと同じメロディーで歌った。そしてそれぞれが動き出す――。
ルナが7階の廊下へ走り出したのでナオキもその方向へ8階から来た恐怖から逃げる為に走った。
黒ルナはここに来て初めて走って追ってきた。その後ろからは武器になる金属の棒を持ったクロビト達。普通の人間と同じように走ってきている。
「あはははっ」
後ろから幼い少女のように笑う黒ルナの声がして後ろを見ると、黒ルナはもう既に手が届く距離に近づいていた。
飛びかかってくる黒ルナ。ナオキは一撃もらうのを覚悟した。けれど、黒ルナはそのまま横を通り過ぎて少し前を走るルナを捉えた。
「きゃっ」
短い悲鳴をあげたルナを黒ルナは押し倒して、そのままコンクリートの床に潜るように下に連れ去った。
「おい」
ナオキが不安と恐怖を投げつけるように二人が消えていった先へ言ってみたが何も変わらない。言葉だけじゃどうしようもないのは分かっていた。
どうする……とりあえず止まっていてはクロビトに追いつかれてしまう……
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