第四十話 計られた

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「私は大丈夫!先に行って!」  走り去った床から微かにルナが強く叫ぶ声が届いた。 「本当に!?」  下に向かってナオキも叫んでみる。しかし、返事はなかった。走りながらだったので下の階まで響くような声は出せなかったので届いたかすら怪しい。  何がなんだが分からない。今何が起こった。どう……どうするのが正解だ。あいつらが持ってる金属の棒で古い階段を破壊していたのが見えた――それを黒いルナが指示したのか?ルナはどこに連れ去られた?まだ上へ行く道はあるのか?  突然な出来事が連続しているので頭の整理がつかなかった。さらには今走っている七階で他にも集団で走っているような音が聞こえる。階段を壊していた音は上からだけでなく施設全体から聞こえていた気がする。気のせいかもしれないがナオキは嫌なほうに推測していた。  そんな理由もあって逃げる方向すら決められない。懐中電灯を持った左手だけを大きく振り、乱れる光と共に走った。曲がり角に辿り着けば、四階と五階と同じくらいに荒れている廊下を何となく走りやすそうなほうを瞬時に選んだ。  いっそもう一つの集団にぶつかりに行ってみるか。先に行ってと言われてもどこに行けばゴールに辿り着けるか分からないし、やはり下に降りてルナを助けに行ったほうが良いか……壊れた階段でもどうにか残った足場で登れるかもしれないし。けど、もうちゃんと戻れる自信もないし、どうクロビトを撒く?  希望の光が見つからないまま、ただ長い廊下を走った。いったいこの施設はどれくらい広いのだろう。行き止まりが無いのは運がいいだけではないことを祈りながら。  金色の髪……そして服は……白…… 「ルナ!」
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