第四十話 計られた

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 廊下の奥からルナが姿を見せた。十字路になった廊下の真ん中で肩をすぼめて祈るように胸の前で手を絡めている。 「大丈夫?ほら、クロビトが来てる。走れる?」  落ち着いた状況なら、抱きしめてどんなことがあったか聞いてあげてみたいものだが、そうは言ってられない。 「大丈夫……こっちよ……」  クロビトが追いついてこないか確認していたら、ルナが服を引っ張った。またルナについて行く形になるとすぐにエレベーターが見えた。  そうか黒ルナを振り切れたならエレベーターで――あと一階。  先を走るルナがボタンを押して開いた明るいエレベーターへ二人で乗り込む。閉ボタンはクロビトが乗り込むよりも早く仕事をこなしてくれて、クロビトの足音は遠くなった。  ……助かった。 「はあ……はあ、ありがとう」  ナオキが8のボタンに指を置いて連打しながらルナに言った。ルナはエレベーターに入ったままの方向を見て今度は自分を抱いている。  よっぽど怖い目にあったのか……あれ、動き始めないな。  そんなことがあっては困る。ここまで来てエレベーターが動かないなんて。8のボタンは何度も押しているのに光っていなかった。上の画面を見ると進行方向を示す矢印は下を向いていた。  「え?」そう短く言えばエレベーター内の電気が消えて、エレベーターの中はつけっぱなしの懐中電灯の灯りだけになり、その光でうっすら見える鏡のような壁には黒い服を着た女が写っていた―― 「下へ……参ります」
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