第四十一話 じっとして

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 後ろではドアが開く音がする。四階に到着したのか……このまま体の感覚を失っていたほうが楽か…………でも、やっぱり嫌だ!死にたくない死にたくない……やめてくれ……。  もう自分の手足は血だらけだろうか……ドアが閉まる音が聞こえて、どうやらまだ生きているらしいと思い、片目だけをゆっくり開けてみる――その目に映ったのは、頭を抱えてうずくまった状態から自分の左手に持っている物を奪い取って煙のように消える黒ルナだった。  徐々に薄くなる黒ルナが完全に消えると体が自分のものに戻り、痛みは元からケガしていた右腕からのみだった。  何が起きていたのか分からない。自分が左手に持っていたものは物理的な力が通用しないのであればと藁にもすがる思いでポケットからお札を取り出そうとして、間違って掴んでしまったものだった。  あれ?このエレベーター動いてる。  手足がギプスを取った後のようで、動かす感覚を確認していたナオキは止まっている場合ではないことを思い出す。勝手にどこに向かおうとしているのか確認すると行き先は八階になっていた。  俺もそこに行きたいけど――大丈夫かこれ――。  罠かもしれないと思ったときには到着したエレベーターのドアが開いてしまって、奪われた写真に写っていた人物がナオキを待っていた。 「大丈夫?」
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