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第四十二話 豊かな廊下
大丈夫かはこっちが聞きたいことだった。ついさっき同じ姿をした者が急に変貌して自分を殺そうとしたのだ。
「君こそ……大丈夫?」
金色の髪の女は下の矢印のボタンの前に立っていた。金色の髪の女がここでボタンを押すことでエレベーターを上に運んでくれたのだろう。
「私は大丈夫。ちょっと危なかったけど。もうすぐそこにドアがあるから早く行きましょう」
「ああ」
霊が傷を負うのか分からないが外傷は無いし身体的に問題が無いのは分かる。ナオキが大丈夫か聞きたかったのは目の前にいる金色の髪の女が白い皮を被った敵ではないかだった。
黒ルナに自分を偽る能力があったのか何なのか……いっそのことここを出る前に直接聞いてみるか……それにこの廊下はいったい……?
八回の内装はその下のすべての階のそれとはまるで違った。一言で言うと綺麗だった。一階から七階までは皆それぞれ差があったが汚れていた。けど今、早歩きで進む廊下は、黒と白でデザインされた大理石の床に形と付いている場所が独特な照明、それを淡く照らす両脇の足元を走る光の線。この近代的な作りは建築費も背も高い立派なビル――ちょうどここに来る前に訪れたオズオワールグループのビルの豊かな廊下のような。
足音もなんだか小洒落たものになって、下の階よりもよく響く。革靴やヒールがぶつかれば自分には縁のない音になるだろう。また別のドアの向こうの別世界に迷い込んだみたいだ。
「そういえばさ……ここで最初にエレベーターに乗る前に写真を拾ったんだ……君が写った写真。写真の裏には君の名前も書いてあった。あれって……」
誰の物ともどうしてあそこにあったのとも訪ねなかった。前を歩く金色の髪の女が言葉に対してどう反応するのかを見た。
そうした結果、金色の髪の女が止まり急に振り向く――
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