第四十六話 仕入れられなくて

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第四十六話 仕入れられなくて

「え……」  突拍子もない言葉を聞いたナオキは固まった。その間もユミコはチョッキのボタンを閉じていっている。 「私決めてたんです。今回ナオキさんを待ってる間に。ここでずっと不安と戦って、どうしようどうしようって、ナオキさんはどうなってるだろうって悩むよりは。私も一緒に部屋の中に入って運命を共にしたほうが良い。力にもなれる」 「うーん……でも」  深く考えなくても、足手まといになるイメージしか湧かなかった。今のところの扉では敵からただ逃げて出口を目指すという状況ばかりなので一人のほうが動きやすい。 「覚悟はできてます。ナオキさんがいなくなると私もここから出るのは無理なのでもしもの時は私を見捨ててもらっても構いません」  ユミコの覚悟は迷いのない言葉から伝わってくるが、捨て身の姿勢でついてきてくれるのは良いことばかりではないとナオキは考えていた。 「ユミコちゃんが持ってる霊感って霊の位置が分かったりするの?ドアの先の空間にはどこかに出口のドアが置かれてるんだけどその場所も分かったりしたら……」 「霊の位置は把握できると思います。しっかりこの目に映すこともできますけど……ドアの位置はやってみないと分かりません」  まあ、そりゃやってみないと分からないよな……もし出口の位置が分かるならメリットのほうが大きいと思ったが確信が持てない以上やっぱり―― 「やっぱり連れていけないよ。俺自身想像以上の危険に合ってるし、もしもの時も君を見捨てられない。君には生きててほしいんだ。俺にとって心の支えだから」  少し言っていて恥ずかしい言葉だったが本心だ。ユミコが死んでしまっては100億円と並んでここで命を懸ける大きなモチベーションの一つが無くなる。 「それで、どうして君には先の部屋に人がいるのが分かったんだ?」  まだ納得していなくて何か言いかけたユミコを差し置いて老人が口を挟んだ。空気を読めないなと思ったがたしかにその話もまだだった――。 「それに答える前にもう一つだけ質問してもいいですか?……僕が十個の部屋をクリアしたときはユミコちゃんも一緒に外に出れますよね?」  また老人とのやり取りが始まる。ナオキはさらっと聞いたが内心この質問をするのはかなり怖かった。 「無理だ……」
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