第三話 気難しそうな老人

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「さっそく行こうかね高橋くん」 「はい。準備できております」  もう出発するのか。色々と説明してほしいことはあるが移動中にと言っていたな。そして伊良部、この男も一緒に行くのか。2人は早足でヘリに向かう。 「さあ少年。乗りたまえ」 「はい」  少年という呼ばれ方は久しぶりにされた気がする。ナオキはヘリに乗るのは初めてだった。先に乗った二人の見様見真似で足を動かし乗り込む。最後に乗ったのは自分なので車のドアを閉めるようにヘリのドアを強く引いた。一応ちゃんと閉められているか中の者の顔色を見て確認したが、どうやらOKらしい。  ヘリの内部はほぼ軽自動車と同じで、2列だけだった。前に運転手と伊良部が座り、後ろに高橋と呼ばれていた案内人の男とナオキが座った。 「よし。出して」  伊良部の指示でヘリコプターが宙に浮き、空を進み始めた。  ずいぶん手際よく作業を進めていくな。俺ぐらい自信が無ければ急すぎて心の準備ができないぞ。  窓に顔を近づけて下を見てみる。ありきたりな言い方だが空から見るビルや家は小さくて、プラモデルのように見えた。  それにしても、興奮して窓から景色を眺めるナオキを気にもせず他の三人は伊良部中心に談笑を始めている。 「…………今度また、船で世界一周の旅に出ようと思ってるのよ。若い子でも連れてね」 「それは羨ましい」 「高橋くん。例の洋館から何か連絡はあったかね?」 「いえ、まだありません」 「ほーん。まだか。それはそうと説明してあげな」  そうだ。のんきに談笑してないで詳しい話を聞かせてくれ。俺はこれから具体的にどういったことをさせられるんだ? 「はい。それでは説明させてもらいます――。ナオキさん、これは分かっていると思いますが、今からあなたには洋館に入って頂き、幽霊の調査をしてもらいます」 「入って見てくるだけよ」  説明を始めた高橋に伊良部が割って入る。 「はい。こちらご覧ください」  高橋がどこからか迷彩柄のチョッキを取り出した。ヘリに置いていたのだろうか。 「こちらのチョッキには胸ポケットの部分に小型のカメラが内蔵されております。このチョッキを着てですね、洋館内のすべての部屋に入って色んなところを調べてきてほしいのです」 「あれは三階建てだっけ?四階建て?」  またもや伊良部が口をはさむ。 「外から見る感じではおそらく三階建てですね。私も入ったことがありませんので。それでですね。こちらのポケットの中には除霊グッズが入れれるだけ入っております。こちらはですね。余裕があれば試してみてほしいんです。使い方はお札だったら幽霊や取りついている物体に貼る。数珠だったら音お鳴らして念じればいいと思うんです。」  胸ポケット以外にやたらついているポケットの中には形や文字の違うお札や数珠が入っていた。たしかに雰囲気はあるがこんなものが幽霊に聞くんだろうかとナオキは疑問を抱いた。 「隅々まで見てくるだけでいいのよ。それで無事に出てくるだけ。中で見たものを詳しく話してくれたら100億円あげちゃうからね。あと一度入ったらある程度成果をあげるまでは出てきちゃだめよ。」
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