第五話 笑みを浮かべる霊

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 スイッチを入れて、廊下の奥を照らしてみる――。思いのほか行き止まりは近く…………一つづつ、左右の壁に不規則にあるドアを数えると確かに十個だった。  ここは実にシンプルな作りだ。どこかのビルの1フロアのような空間で廊下に部屋が十個と出口に休憩スペース。あるのはそれだけ。このドア一つ一つをクリアすれば100億円が手に入り美少女を救える。  一番手前のドアに手をかけてみた――。特に何も感じないな。ナオキはためらわずドアノブを回した。それじゃあいよいよ始めていくか――。  ドアを開けると体中から力が抜けてふわりと宙に浮いているような感覚に襲われた。そのままドアの向こうへ吸い込まれるように体が移動する。自分以外の誰かが体を操作しているみたいだ――。体全体が部屋に入り勝手にドアが閉まるとその感覚から解放された。  いる――。ここには何かがいる――。  重力が強い……。空気がねっとりと肌を撫でてくる……。自分に霊感なんてものは全く感じたことがないが、今までにないほど第六感のようなものが危険信号を出している。  入った場所から見る部屋の全体はどこかの誰かの寝室といった印象だ。主に白色と茶色で構成されるタンスやベッドといった家具。白いカーペットが敷かれた床は片付いていて無駄なものはない。  息を吸っても吸っても酸素が上手く取り込めてないのか息苦しい。鳥肌が立ってきた。  そーっと部屋の中央へ歩いて行ってみる。視界を支える明かりは正面の小さな窓から入る、か細い太陽光のみで室内は薄暗い。今にもどこからか現れそうだ……  来るなら来い…………  ガタッ  後ろから物音がして瞬時に振り返ると人の形をした何かが立っていた――  笑っている――
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