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そんな様子の春樹を前にした少女が、口を開いた。
「お兄ちゃんこそ、こんなところでなにしてるの?」
「え…君、日本語話すのか…。」
目の前の西洋風の少女はカタコトだが、一応日本語を話せる者だった。また、歳相応の幼い声だ。
そして、その本音がつい口から出てしまう。
春樹は驚いたのと同時に、相手に気を使わなくていいという安心感を覚えた。
「かんたんなことならはなすよ。」
「そっか。まあ、とにかく危ないから帰りなよ。お母さんかお父さんは?」
すると、そこで会話が途切れる。
少女が黙り込んだのだ。
しばらく深夜の通学路に静寂が訪れる。
その数十秒後、再び少女が口を開いた。
「ねぇ、お兄ちゃん。さっきセシルね、この人ころしたんだぁ。ほら、こっちだよ。」
セシルと名乗ったその少女は、急に春樹の腕を引いて歩き出した。
小さな身体にしてはかなりの力があった。
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