序章

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序章

 あの世とこの世の狭間に、人ならざるものたちの暮らす世界がある。人の言葉でいうところの(あやかし)ものだ。妖たちはこの世界を『狭間(はざま)』と呼び、小さな街を形成して生きている。  建物は木造がほとんど。街を照らす明かりは火。『この世』に比べると狭間の街並みは些か古い形で止まっている。短い一生を有意義に過ごす為、便利を追求する『この世』の人々と違い、狭間で生きるものの時は長く、不思議な力に満ちた世界では、進化が止まるものらしい。  妖たちは思い思いの姿で暮らす。人の形をとるもの、動物や植物の形をとるもの、物の形をとるもの、そのどれにも当てはまらない奇妙な形のもの。服装も和装であったり、洋装であったり、どこかの国の民族衣装のものもいる。  夢妖(ゆめあやかし)の一族が束ねる街には『夢幻(むげん)通り』という商店街があり、街で一番の賑わいが見られる。食事処や日用品屋、娯楽施設などがあり、昼も夜も絶えず何処かしら店が開いている。 ーこれは、夢幻通りに店を構える『手紙屋』の主人の物語。
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