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Epilogue
「優紀さん、朝ですよ」
「ん……」
あたしは寝返りを打ってから思い瞼を上げる。そこには優しく微笑む那津がいた。既に着替え終わっている那津を見て、あたしは一気に覚醒する。
「あ、今日って国家試験の日か……」
あれからあたしは六条会と縁を切った。父親は最後まで反対していたけど、結局跡継ぎがあたしの意志を尊重してくれた。那津は父親の意志を継ぎ、マトリとなるために勉学に励んできた。あたしたちは去年から同棲を始めた。那津のお母さんがあたしたちの関係を認めてくれたのが大きかった。
「絶対受かりますから見ててください」
「那津は賢いから大丈夫だよ」
「ふふっ、じゃあ行ってきます」
あたしと那津は深い口づけを交わした。那津は未だにあたしとキスするのが慣れないようで毎回顔を赤くする。あたしはそんな那津が可愛くて仕方ない。
あたしたちは飴細工のように繊細で儚くてぎりぎりのところで生きている。ちょっとでも衝撃が加わってしまえば、あたしは那津の傍を離れなければならない。だからこそ、あたしはこのまま那津とともに永遠に溶けない飴細工でいたい。
【完】
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