第七話 二人きり

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第七話 二人きり

 みんなが会議室から出て行くと、赤井さんは入口のドアをゆっくりと閉めて、一瞬だけ、ドアにおでこをもたれ掛けさせた。  そして、少しうつむきがちに一息ついてから、クルッと、僕の方に向き直して、背中でドアにもたれた。  今、会議室に、赤井さんと二人きり……。    今、赤井さんが、僕のことを、真剣な眼差(まなざ)しで見つめている……。  僕は、ドキッ! として、 ー ゴクリッ! ー  生つばを飲み込んだ。  な、何なんだ、一体……?  赤井さんは、何も言わず、ただ僕の目を見つめながら、一歩ずつ、ゆっくりと、ゆっくりと、近づいて来た。  ドキドキッ、ドキドキッ、僕は緊張のあまり、 ー ゴクリッ! ー  再び、生つばを飲み込んだ……。  今、赤井さんが、僕の目を真剣な眼差しで見つめながら、僕の目の前に立っている。  その距離、わずか、50cm!  「森林くん……」 「は、はいッ!」 「うちの弟から聞いたんだけど~……」 「は、はいッ!」 「森林くんって~……、私のこと~……、好きなの?」 「えッ!」  あいつ、しゃべっちゃってんのかよ~。え~~~……。で、どうする?! この状況! でも、その通りなんだし、否定するのもおかしいし……。 「は、はいッ! 好きですッ!」  言っちゃったーッ! オイオイ、思わず言っちゃったよ、オイ~~~ッッッ!!!  で、どうなる、この後の展開ッ?! もう、言っちゃったよ~、オイ~ッ! 「私も~……、森林くんのこと……、嫌いじゃないよ……」 「えーーーッッッ!!! そ、それって~……?」 「それ以上のことは、今は言えないの。私、生徒会長だし……。もし、あなたと気まずくなって、生徒会の空気が悪くなったら、生徒会を運営していく上で、生徒会長として、罪なことだし……。分かって!」 「は、はいッ!」  そ、そうなんだ~。赤井さんも、僕のこと~……。そ、そ、そうなんだ~……。  僕は、直立不動のまま、自分でも、顔が真っ赤っかなのが分かる。  将来の、『森林緑(もりばやし・みどり)』誕生に向けて、一歩近づいたのかッ! ……なんて思うと、全身全霊が熱っぽくなった。 「だから、コレ!」 「えっ?」  赤井さんは、(のり)で封が()じてある、A4サイズの事務用封筒を、僕に手渡した。何だか、フワッと、こんもり、封筒が柔らかく(ふく)らんでいる。 「弟から聞いちゃったんでしょ?」 「えっ? 何をですか?」 「だから、その~……、私の~……、赤い~……、T~……」 「えーッ! あっ、はいッ!」  僕は、とっさに、ピンッ! と来たので、みなまで言わせちゃ恥ずかしいだろうと、赤井さんの言葉を(さえぎ)った。 「生徒会長としての、私の気合いッ! それと~……、私の気持ち! 持ってて!」  赤井さんは、顔を赤らめた。 ー 第八話へ、つづく ー
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