3.5【えぴろーぐ】
まさか俺の恋が叶うなんて思ってもみなかった。玉砕覚悟の告白だったのに、那月も俺が好きだったなんて夢みたい。すげえ嬉しい。
小っこい頃、那月は俺を「コタ」と呼んでいた。いつからか「恋太郎」と呼ぶようになって、もちろん嬉しいけど少しだけ淋しかったのも本音。それが最近また那月は俺をコタと呼ぶ。やべえ、嬉しい。
それから、それから。
ハイエナAこと橘川 美弥は、マジで単なる後輩であり部下だったみたい。初めて上司の立場となり担当することになったのが彼女で、それが知った子とあり可愛がっているそうだ。
そしてもうひとつ。
祭の初日に腕を組んで現れたのは、橘川が下ろしたてのヒールで靴擦れを起こして痛いの痛いの飛んでいけ、歩くのを補佐してやっていたとのこと。なんだよ紛らわしい、だったら最初から言えっての。
ちなみに橘川には高校からつき合っている彼氏がいるそうだ。で、来年の夏に結婚するのだとか。それはめでたい、おめっとさん。
ぜひ那月と一緒に挙式に参列して欲しいと言われた。チャペルで結婚、それから披露宴。ええ、ええ、ぜひとも参加しますとも。きっちりこの目でハイエナが嫁ぐのを見届けなければ、心の底から安心できないからね。
で、最後に。
「なあ、なっちゃん。マジで童貞なの?」
「しつこいな。そうだと言っているだろ」
「ほんとうのほんとうに? とか言って、実はこっそり俺に黙って誰かに奪われてました──とかだったらショックだよ? 俺すっげ傷つくからね」
「はっ、もしや捧げたんじゃ」と口走ったところで那月が俺の口をふさぐ。
「嫉妬もそれ以上エスカレートするとウザい。俺が信じられない?」
「イエ、シンジマス」
可愛いチュウなんてもんじゃねえ、濃厚なベロチュウされて脳が溶けた。おかげさまで、また胡散臭い外国人ばりの片言となる。
「よし。恋太郎の処女は俺がもらう」
「えっ、それって」
俺が下……食われる立場ってことか。ちょっと待って。じゃあ那月が俺をリードを?───
「ちょっと! やりかた知ってるの!? ほんとうに、ほんとーに童貞なんだよね」
「さあな。ああそうだ、バナナの売りさばき千本達成だろ。約束通り俺が選んだ仕事に就いてもらうぞ」
「もうっ、はぐらかさないでよ──っ!」
夏祭りの日と、恋する俺と。/おわり
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