16人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
トーコさんの姿が見えなくなるまで見続けた僕は、モヤモヤした気分で階段に座り込むと、さっきまで夢中でやっていた事に目を落とした。
二つに切り裂かれた胴体は、土に混じって動きは止まっていた。
どこからやってきたのか、まだ乾ききっていない体に蟻たちが集まりだした。
その動きは僕を無心にした。
僕は立ち上がり握り締めていた石を投げた。
そして勢いよく階段を駆け下りる。
そのまま走って家を目指した。
夏の日は長く、明るい空は今何時なのか分からなかった。
夕食に間に合うように、玄関の前で息を切らすと、見覚えのある靴が目に入った。
僕はTシャツの裾で汗を拭くと、賑やかな声が響いている廊下を通り、居間に続く扉を開けた。
「あ、おかえり!」
そこにはいつもの家族の風景が広がっていた。
同時に僕に向けられた顔の多さに気付く。
「こんにちは。殺し屋」
満面の笑み・・・・・・
不適な笑み・・・・・・と表現するのか。
そこにはトーコさんが当たり前の様に座っていた。
さっき神社で会った時より一段と真っ赤な口紅が目立った。
ヨウちゃんと並んでいるせいかもしれない。
そんな化粧気のないヨウちゃんが僕に言った。
「ユウ! 神社でミミズの解体してたんだって?」
ヨウちゃんは僕の父さんの妹で、今年の春に島に戻ってきた。
離婚したから戻ったのか、実家の旅館の建て直しの為に離婚したのか、僕は詳しく知らない。
最初のコメントを投稿しよう!