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夏の嵐⑤
軽音楽部の部室は西校舎の一番先にある。
扉を開けて士郎が入ってくる。
「凉、大丈夫かな?夕子ちゃん来るかな?」
凉はぶっきらぼうに答える。
「大丈夫さ。」
「絵里も来てない。やっぱり昨日のあの騒動がまずかったな。」
「終わってしまったことはいまさら仕方ないさ。」
30分ほど過ぎた頃扉が開く。
「お待たせ。」
絵里だ。外から顔を乗りだす。
「遅いじゃないか」
士郎が顔をしかめる。
と同時に扉をいっぱいいっぱいまで開ける。
「じゃーん。新入りだよ。」
夕子も顔を見せ頭を下げる。
「夕子は今日からあたし達の仲間なんだから。優しくしなよ。」
「昨日ははちゃめちゃにしてたくせに。」
士郎がぼやくと絵里は士郎の左耳を引っ張る。
「いてて‥」
「あんたに言われたくないよ。」
「じゃあみんな練習するか。」
凉をギターを持ちみんなに合図する。
士郎はドラムセットに座り、絵里はエレクトリックベースを背負う。
「夕子はキーボードを頼むよ。」
夕子はうなづき、キーボードの椅子に座る。
凉はみんなに号令をかける。
「1-2-3.-4、」
凉はエレクトリックギターでギターリフを奏でる。そして絵里がベースで追い、士郎がビートを刻む。そこに夕子のキーボードが色をつける。
(曲が新しく甦った‥夕子のキーボードで。)
凉はキーボードに気になり思わず歌い出しが遅れそうになった。
‥時は過ぎても僕たちは変わらない。
タイムラブ‥
(夕子と、このサビをハモれば最高だろうな。‥)
夏の嵐はもう直前まで迫っていた。
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