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夏の記憶②
「転校生を紹介する。」担任の柏崎が2年A組全員に行き渡るように声をあげた。
「入ってきなさい」
ひとりの長い髪の少女が教室にはいってきた。
「おーかわいこちゃん、こっち向いて。」A組の男子それぞれがはしゃぐ。
士郎は隣の席の凉に囁く。
「おい、凉、さっきのバイクの女、あいつじゃないか。」
「士郎、間違いない、あいつだ」 凉が大声で叫ぶ。
「台場、どうした、何かあったか?大声出して」柏崎が問い詰める。
「いえ何も。」台場はバツが悪さそうに答える。
教室内に笑い声が巻き起こる。
「美杉くん、台場くんの右隣りの席に座ってもらえるか。」
美杉は無言でクラス中に頭を下げるとカバンを抱えて台場の隣に着席する。
そして今度は台場の方へ頭を下げる
「ああ‥よろしく」台場は気が抜けたように答える。
台場は今朝のバイク競争がどうも頭に引っかかっていた。
それと昨日の寝不足がこたえていたのだろう。
思わず机に伏し居眠りを始めた。
「台場、起きろ!」
柏崎が教科書を丸めて叩いた。
「いてえなー誰だ!」
「ばかもん!廊下に立ってろ!」
教室内でまた笑いがまきおこる。
「ちぇーまったく今日はなんて日だ」
廊下に立った凉が呟くやいな長い髪を赤く染め、派手な制服を着たいかにも不良少女といった女が通りかかかる。
「凉、こんなとこぶっ立ってまた何かやらかしたか?」
「なんでもねぇよ。お前こそまた抜け出してまたさぼりかよ。」
(香月絵里‥おれと同じ高校2年同級だが、ダブってるから18才。ほんとは頭はいいのにときたま答案用紙を白紙でだす。スポーツも抜群。ツッパっていなかったらいい女なのにな‥)
「今日はお腹の調子が悪いからさ。これから保健室さ。」
「おいおい今日バンドの練習やるんだ。士郎も都合いいて頼むわー」
(士郎はドラム、絵里はベース、こいつらは最高のリズムセクション。こいつらがいて最高のギターが弾ける)
「わかったよ。練習には行くさ。それよりなんでぶっ立っているのか訳話しなよ。
凉は朝からの顛末を話した。
「なるほど、その転校生が疫病神ってわけか。」
「まあたいしたことねえよ。」
凉はばつ悪そうに答える。
「あとでその転校生に挨拶でもしに行くか」
「おいおい、手荒なことはやめとけよー」
「そいつは相手次第ってことさ。」
絵里は笑い声を上げながら立ち去る。
(絵里のやつ大丈夫かな?なんか騒動起こさないか?)
凉は懸念を隠せなかった。
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