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夏の嵐①
担任の柿崎が終礼の挨拶を終える。
「今日はここまで。レポートは明日期限だからな、みんな忘れないように。」
柿崎が出たあとしばらくして香月絵里が取り巻き3人を連れて教室に入ってくる。
「美杉夕子てどいつだ?」
夕子は手を上げる。
「お前か!ちょっと道場まで顔貸しな!」
横にいた士郎が絵里に声をかける。
「絵里やめとけよ。美杉さんは障害あって喋られない。大変なんだ。」
「凉はどうしたんだ。」
「職員室へレポートの予備もらいに行ってるよ。」
「まあいい。」
夕子はわたし道場に行きます‥と書いたノートを見せる。
「いい根性だ。」
絵里は取り巻きの連中に道場への案内の指示を送る。
「おいおい、どこへ連れていくんだ。凉が知ったら‥」
士郎は凉が怒る顔を想像したときには絵里も夕子も教室を出ていた。
しばらくすると凉が教室に戻ってきた。
「士郎、レポート用紙もらってきたよ。おれ間違えて捨ててしまったからな。さあ帰るか。」
凉はカバンをとり出ようとすると、
「凉、大変だ。絵里のやつ道場へ夕子を連れて行ってしまった。」
「なに。」
「おれ、止めようとしたんだけど。」
「なんで止めなかった!お前何やってたんだ!」
凉は士郎の上着を掴み怒鳴る。
「すまねえ‥」
(絵里のやつ、焼きを入れるつもりか、なんでだ‥夕子が危ない‥)
凉は慌てて教室を出る。
「おい、待て、凉」
凉には士郎の声はまったく入らなかった。
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