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夏の嵐②
中央シティー第3高校柔道部の道場は南校舎の一階奥にある。
「主将、ちょいと道場を借りるよ。」
絵里は主将の高崎を呼び出す。
「絵里、どうだ。そろそろ決心して柔道部に入らないか。」
「主将、ごめんね。他にやりたいことあるから」
「バンドか。おまえの柔道の実力はトップだからな。高校選手権でも指折りだから、もったいない」
「試合はまた考えるからさ」
「おい、みんなちょっと道場開けるぞ」
高崎は部員を連れ出す。
道場の扉を閉めると絵里は持ってきた柔道着を投げ出す
「着替えな!」
夕子は無言で柔道着に着替える。
「あんた、時空光学研究所の所長さんの娘だって聞いたよ。いいかい、よく聞きな!
あたしの両親はあの事故の巻き添えで死んだんだ。研究所の爆破で周りに住んでいた人たちも
大勢亡くなった。おかげであたしは孤児さ。必死で生きてきた‥だからあんたみたいにのうのうとしてるのが許せないのさ。」
夕子は目を瞑り、無言で構える。
そしてメモリックスを取り出しみせる。
「なんだと‥わたしが負けたら学校やめます。でも勝ったらわたしのいうことを聞いてもらえますかだと。」
取り巻きの一人が騒ぐ。
「このガキ、絵里さまが柔道の達人であることを知らんらしいぞ。」
絵里が啖呵を切る
「お黙り!あたしはまじで頭にきたよ。おまえのいうことなんでも聞いてやるよ。だがそれは永久にない。」
絵里は夕子の柔道着を掴むと、右足に大外刈りをかける。
夕子は空中を舞った。
道場の扉を開けた凉はまさにその瞬間をみていた。
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