求 熱

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求 熱

 歩くことに、必死になってみよう。  毎日当たり前にやってる、『歩く』ということに。  結婚して生活が安定し、規則正しい生活スタイルを手に入れた。  世間でいう『幸せ』ってものを、直に感じることができた。  妻もよくやってくれるし、手前みそだが、やっぱり可愛い。  ただ…何かが欠けた。  自分自身を発奮させる何か。  自分自身を納得させる何か。  挑戦する情熱。  自己を超えたい欲求。    安定が嫌いなわけではない。  むしろ、それを求めて今までやってきた。  しかし手にしてしまうと、それは同時に『退屈』という感情を私に与えた。  何かに一生懸命になりたくて。  何かにのめり込みたくて。没頭したくて。  10代の頃のように。  仕事は仕事で一生懸命だし、テレビを見るのも好きだ。  ただ…何か物足りない。  私の中で、何かが疼く。  だから、歩くことにした。  自分のやれることまで。
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