2人が本棚に入れています
本棚に追加
私は覚られないよう任地を盗み見る。
(またあの国か……)
配達人は震える私を不思議に思って首を傾げた。
「どうしましたか?あなた、初めてでは無いのでしょう?」
「昔は昔だ。……たった一月前、そこで餓死があったのを君は聞いていないか?
いいか?餓死だぞ!何故、そんな目に遭わねばならない!」
私の感情を察せられず、配達人はずっと首を傾げたままである。
「彼は……、私に初めて出来た友。
まさに魂が共鳴し合うような大切な友だったんだ」
「はあ、そうですか。うーん……、
まあ、過酷な事は理解していますが、天は全てを見守っておりますから。あなたの不断の努力は報われ、必ずや成果として返ってくる事でしょう」
「今の世はおかしい!!明らかにバランスを欠いている、破滅に向かっているだろ!無策でこのままでは……」
声を荒げた私の様子を見ても、配達人はキョトンとしたままだった。
「……いや、君に言ってもしょうがないことだったな」
最初のコメントを投稿しよう!