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「当分は安静にしていないと。それからきちんと栄養を取って……くれぐれも無理はいけませんぞ。今が一番大事な時期ですから」
「は?」
勇駿が訊き返したところでムジーク医師は梨華に眼を止める。
「梨華ちゃん、まだ動いてはいけないよ」
とがめられた梨華は細い声で、
「母さまが心配で……。すぐに自分の部屋に帰るから、先生、中に入ってもいい?」
いいとも、と医師はうなずく。
「その代わり、お話がすんだらベッドに戻るんだよ」
父に支えられて寝台のそばまで行くと、梨華はおそるおそる声をかけた。
「母さま、ご病気なの?」
いいや、と阿梨は横になったまま、微笑んだ。
「でも具合が悪いのでしょう?」
「えーと、つまり、それは……」
言葉に窮する阿梨の後を、ムジーク医師が引き取るように、
「今、ちょっとお母さんの体調が悪いのはね、お腹に赤ちゃんがいるからなんだ」
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