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同じテーブルを囲む勇仁と勇利は珍しいこともあるものだと思いつつも、もちろん口には出さずに朝食を続けていく。
何しろ日頃は寒風が吹きすさぶ甲板に立っていても、風邪ひとつ引かない頑丈……いや、丈夫さなのである。
「わたしはもういいから梨華に朝食を持っていってやらないと」
娘の梨華は刺客に狙われたアディーナ姫を守って重傷を負ったが、医師の治療もあって順調に回復している。
しかしまだ自由に動き回れるほどにはなっていない。
席を立ち、梨華のために食器を取ろうとした時だ。不意に眩暈が阿梨を襲った。
「──阿梨!」
ふらりと揺れ、倒れそうになる阿梨を、とっさに立ち上がった勇駿が受け止める。
「阿梨 !?」
「母さま !?」
只ならぬ事態に、勇仁も勇利も弾けたように立ち上がる。
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