44人が本棚に入れています
本棚に追加
/127ページ
「わたしは、どうして……」
「朝食の席で倒れたんだよ。覚えてないかい?」
「ああ、そういえば……」
「今、ムジーク先生を呼びに行っている。じきに来てくれるはずだ」
阿梨はふうっと大きく息をつき、ぽつりと言った。
「夢を見ていた」
「夢?」
「母上の葬儀の時の夢だ」
「真綾さまの……」
どう答えていいかわからずにいる勇駿に、
「勇駿、頼みがある」
「何だ?」
「もしわたしが死んだら、一族のしきたりに従い、母上や祖父のように水葬にして欲しい」
勇駿は一瞬あっけにとられ、それから声を荒げた。
「何を縁起でもないことを言っている!」
阿梨はかすかに笑って、
「そんなに怒らないでくれ。もしもの話だ」
体がだるくて鉛のように重い。ここしばらく体の不調を感じないわけではなかった。だが、やることが多すぎて自分の身の心配など後回しにしてしまっていた。
最初のコメントを投稿しよう!