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母の夢は何かの暗示かもしれない。
死の淵にいた梨華を母は助けてくれた。今度は自分を迎えにきたのだろうか。
勇駿に叱られるのを承知の上で、阿梨は言葉を続けた。
「恐ろしくはない。誰でもいずれは死ぬ。早いか遅いかの違いだ」
後悔はない。思う存分生きた。いい人生だった。
「ただ、心残りは子供たちのことだ」
子供たちはまだ八歳。母親が必要な年齢だ。
けれど子供たちには父がいる。勇駿になら安心して子供たちを任せられる。
「わたしがいなくなったら再婚してもよいぞ。あの子たちを大切にしてくれる相手なら」
「馬鹿なことを……頼むから不吉な話は止めてくれ」
怒るというより懇願に近い口調で勇駿は言った。
阿梨が生まれたのは自分が五つの時。
水軍の船の中で生まれた、小さな儚げな姫君。その時からずっと、そばにいて阿梨を見つめてきた。
阿梨のいない人生など考えられない──。
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