後日談 海の民の子供たち+α

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 パンにチーズ、果物とお茶。梨華の朝食を載せた盆を片手に、勇利は部屋のドアをこんこんと叩いた。  中から、はーい、という妹の元気な返事を聞くとドアを開け、できるだけ明るく声をかける。 「おはよう、梨華」 「兄さま?」  案の定、梨華は眼をぱちぱちさせている。 「朝ごはん、持ってきたよ」 「母さまは?」  当然の質問に勇利は平静を装って、 「えーと、母さまはね、今日は忙しくて朝から出かけているんだ。だから僕が代わりに朝ごはん運んできた」  慣れない嘘に胸をどきどきさせながら、盆を寝台のかたわらのテーブルに置く。 「傷はどう?」 「もうほとんど痛くないわ」 「ならよかった。遅くなってごめんね。何から食べる?」  「じゃあ、まずはお茶から」  朝のお茶は母の好きな茉莉花(ジャスミン)茶だ。
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