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そして、そのそばで慎重に打ちこむ機会をうかがっている短髪の少年が兄の勇利。
「どうした? 打ってくるがいい」
乞われても勇利は木刀を握ったまま、なかなか動けずにいる。
そんな孫をじれったく思いながら、祖父は内心ため息をついた。
兄の勇利は学問には秀でているが、武芸の方は妹と比べると、どうも心もとない。先が思いやられるというものだ。
勇利が攻めあぐねている間に、がらがらと音がして馬車が近づいて来る。
馬車は桟橋の手前で止まり、先に降りた長身の男性が、後から降りるすらりとした女性に手を差し伸べる。
彼の手を取った女性は長い髪を高めの位置でひとつにまとめ、黒の光沢ある立襟の長めの上着と脚衣。腰には剣を帯び、いわば男装だが、凛とした美しい容姿とよく似合っている。
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