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第二章 昔話
航海は順調に始まった。
蒼穹の下、船は追い風を受け、すべるように海原を進んで行く。
やがて陸地がすっかり見えなくなると、阿梨は甲板にたたずむアディーナ姫に声をかけた。
「姫君、ご気分はいかがでございますか。めまいや吐き気などはお感じになられませぬか?」
アディーナ姫は振り返り、
「いいえ、少しも。むしろ心地よいくらいですわ」
「それは頼もしい」
その言葉の意味がわからず、小首をかしげるアディーナ姫に、阿梨は甲板を目線で示した。
そちらに視線を向けると、甲板では自分に付き添ってくれているタジクの護衛の兵や、侍女たちが青ざめた顔をしてぐったりしている。
「皆、どうしたの?」
不思議そうにたずねる姫に、阿梨は、船酔いです、と説明した。
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