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第三章 願い
フローレスは独立した海洋都市国家として長い歴史を持ち、さまざまな人や物が行き交う交易の中継地点である。
街の中央を流れる大運河沿いには貴族や商人の壮麗な館が居並び、そこから小運河が街のいたる所に張り巡らされている。
この街では馬車は使われない。細い運河でも入っていける小舟が人々の足となる。
「いよいよアディーナ姫を乗せた羅紗の船団がこのフローレスに入港するらしいぞ」
「やっとお出ましか」
大運河に面した賑やかな酒場で、ケインとラルフは船の往来を眺めながら、例の計画について話しこんでいた。
策は幾通りも考え、人も集めた。金で集めた連中だが、腕は確かだ。
用意した策のどれでもいい。要は雇い主の依頼通り、婚礼を阻止できればいいのだ。
「船が入ってきたら俺たちも出迎えに行こうじゃないか。歓迎してやろうぜ」
この地方特産の香り高い白葡萄酒の注がれたグラスを手に、ケインは不敵な笑みを浮かべた。
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