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第五章 攻防
陽がすっかり傾いた夕暮れ、阿梨は指定された場所へと細い運河沿いの道を歩いていた。
もちろんひとりではない。勇駿を初めとする水軍の腕利きの者たちが、気配を押し殺し、ひそかに付き従っている。
街外れの迷路のような道を進む。すでに周囲に家はない。木立ちを抜けると海を臨む開けた場所に出て、ぽつんと朽ちた修道院の門があった。道はさらに運河に続き、つきあたりには死者の島が見える。そちらにも小舟を使って水軍の者が待機しているはずだ。
石造りの門をくぐり、建物の正面まで来ると、中から扉が開き、銀髪のがっしりとした男が姿を現した。
「あんたが水軍の長か」
いかにも、と阿梨は峻険な表情で答えた。
「望み通り来てやったぞ。子供たちはどこだ?」
男が建物の中に向かって顎をしゃくると、茶色の髪を肩まで伸ばした男が勇利と梨華を連れて外に出てくる。
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