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その赤い粘り気のある液体を目の当たりにしたアレクサンドルは明らかに不快な表情に変わり「人間を何だと思ってる」とひとりごちた。
「えっ?何ですって?」ロレナが敏感に反応して言う
「いや、何でもない。私は男のものは要らん、君が飲めばいい」アレクサンドルは慌てる風でもなく応える
「あら、そう。ではお言葉に甘えて後でいただきますわ」ロレナは嬉しそうに言った
「それでダリアは部屋に閉じこもっているのかね?」アレクサンドルが尋ねる
「ご心配なく、部屋にはいるけれど閉じこもる様な弱い娘じゃないわ」ロレナが笑顔で応える
「君に似たんだね」アレクサンドルの口から思わず本音がこぼれる
「そうかしら?もしそうだとしたら何としてでも見つけ出さなきゃ駄目ね、あなたの様な優しい男性を」ロレナは穏やかな表情とは裏腹に力強い口調で言った「あなたの様な優しい人間の男性を…」
それから暫くしてアレクサンドルは書斎に戻った。
ソファーに沈み込む様に座る。
「いい気なもんだ、私はもう人間ではないと言うのに」そう呟くと首に残る傷跡を指でそっと撫でた。
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