月影のダリア

12/20
前へ
/20ページ
次へ
ダリアは窓辺に腰掛けて夜明けの景色を眺めていた。 しかし、ここは人里離れた山の中の一軒家である。したがって景色と言っても見えるものは木々、ひたすら木々のみと言うことになる。 ダリアが窓辺に座るのはそんな木々を眺めるためと言うよりも、樹木の香りを味わうため、それを運んで来る風を感じるためであった。 初夏の早朝、心地いい風が吹き抜ける。 立ち並ぶ木々の上には雲ひとつない薄明の空が見える。 「ルカ、酷いことをしてごめんね」ダリアがその今、明けようとする夏空に向かって呟いた「掟だったの…」 その時、一粒の涙がダリアの頬を伝って落ちた。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加