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ゲストルームのドアは思っていたほど重くはなかった。
ダリアはそっと部屋の中へ入ると慎重にそのドアを閉めた。
灯りの消された部屋の中は暗くて殆んど何も見えない。
ただ耳を澄ませばベッドの辺りからルカの寝息が聞こえて来る。
ダリアは窓辺へ行きカーテンを少し開けた。
天から月の光が優しく舞い降りて来る。
その光に包まれたダリアの体はシルクのナイトウェアーの素肌の様な陰影と相俟って、この世のものとは思えないほど美しかった。
この時ルカの目が覚めた。
しかし彼は目の前の状況を理解しようとすることも忘れて、ただダリアの余りの美しさに見入っているしかなかった。
「なんと美しい…」ルカの口から言葉がこぼれ落ちた
その言葉に気づいてダリアが振り返る。
するとそれに伴い彼女の体のシルエットがナイトウェアーの中で揺れる。
「ルカ…」
そう言うとダリアはゆっくりとナイトウェアーの左右の肩紐を肩の外側へとずらして外した。
それからほんの少し肩の力を抜いた。
すると脇の下で挟む様な形でとどまっていたシルクのナイトウェアーが彼女の体の表面を滑る様に足元まで落ちた。
それは彼女が湯上がりに纏った唯一枚の衣である。
そしてその唯一枚の衣が今、彼女の体から取り払われた。
月光が彼女の全てを優しく包み込む様に照らしている。
そこには悠久の昔から変わることのない真実の美があった。
そしてその時、何故だかルカは死をも厭わないと思った。
月影に浮かぶダリアの美しさには命を捧げても構わないと思わせる妖艶さが潜んでいた。
それからダリアは脱ぎ捨てたシルクの衣を床の上に残したままゆっくりとルカの方へ歩いて行った。
背後から月の光を浴びながら、彼女は質量感のあるシルエットとなって近付いて行った。
そしてそっとルカのブランケットの中に入った。
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