夏の過ごし方

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グラウンドでは野球部とサッカー部、陸上部がひしめき合って練習していた。端のプールでも水飛沫が上がっている。 今はインターハイを目前にしている時期で、特に三年生は必死になって部活動に取り組んでいる。 私は植木の陰に隠れながら、グラウンドの端を走っている野球部の様子を覗いた。 野球部員たちは既にユニフォームに着替えて走ってはいるが、10人しかいない。誰か休みなのだろうか。 ベスト8までいっているような部活動なら、もっと人がいても良さそうなのに。 バックネットの辺りで、走っている生徒を見つめる、麦藁帽子にサングラスのソフトマッチョ男。団扇でパタパタ煽ぐ彼の首にはピンクのタオルが掛けられている。 アレだ! アレが監督に違いない! 今は選手たちがランニング中。絶好のチャンスだ。私は愛用のA5サイズのノートにボールペンを引っ掛けて、忍者のように背を丸め、サッと彼に向かって走った。 「あのっ! すみません!」 私は普段引っ込み思案で内気な方だが、漫画のための情報収集にはやぶさかではない。 「うんん?」 麦藁帽子の日焼けした彼が振り返る。サングラスを外すと、大きな目がキョロッと私を見た。サングラス焼けしており、逆パンダになっている。 「あの、監督さんですか?」 「はい、そうですよ」 ハキハキとした返事で首を傾げる彼に、私は前のめりになった。 「うちの学校の野球部が、ベスト8に勝ち進んだ秘訣についておうかがいしたいのですが!」 ああ、興奮しすぎて鼻息が荒くなってしまう! 監督さんは私の様子や丸いメガネを見て「ああ、新聞部?」と尋ねてきた。 「その類のものです」 「類ってなに」 別に間違ってはいない。内容を記事にするか、漫画にするかの違いだ。 「……秘訣というより、まあ、元々能力のある選手たちだったからね。あいつらの才能が開花できるように、ちょっと教えただけだよ」 おおっ、取材に協力態勢。 今度の新人賞の題材は、野球部ベースの話にしようか。 いや、むしろこの凄腕の監督を主人公にして、支えてくれた女教師とのラブストーリーにするか。 流れる汗をせっせと拭いながら「ふんふん」と頷き、熱心にメモを取る。
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