ベスト4への試合

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狙い通りのカーブ。 それを待っていた西木先輩のバットが狙い打ちする。 金属バットが吼えた。観客席からは再びどよめきと興奮が湧く。 打球はライトの頭を越えた。 私たちは全員立ち上がり、相手の動きと二塁にいた平原先輩の走塁を見守った。足の速い外野手。三塁を蹴る。ライトからボールが投げ返される。平原先輩はホームを駆け抜けて、応援席は歓喜に沸いた。 同点になった。 相手の動きが一瞬緩んだところで、相手ベンチから「バックホーム!」と、けたたましい声が上がる。 一塁にいた柏田先輩が既に三塁を回っていた。矢のようにホームベースを目指す。 中継に入っていた二塁手が慌ててホームにボールを投げ返した。 「ああああああっ!」 私は思わず悲鳴ともつかない声を上げてしまった。 柏田先輩のヘッドスライディング。ボールがミットに収まった。 交錯する二人の体。 息もできない、静まり返った真夏のグラウンドに審判の声が響いた。 「セーフ!」
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