夏合宿と水着

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プロテイン補給の時間になると、双子の山根兄弟が取りに来てくれる。守備の要、鉄壁となってくれる二人は、二年生でありながらも先輩たちの信頼を勝ち取っている。 猫のような大きく吊り上がった目。そして動きも然り。「ネコ」だと可愛すぎるのでヤマネコ兄弟と心の中で呼んでいる。彼らはほとんどの内野の範囲のヒット性の当たりを後逸しない。 そんな二人だが、普段は人畜無害で笑顔を絶やさない。名前だってユニークで、兄は六月(むつき)、弟は八太(ハッタ)。六月八日に生まれたらしい。 「お疲れ、みのりん」 「あっ、お疲れさま」 唯一敬語を使わなくてもいい二人。接するときは同い年なので気が楽だ。まあ彼らのお陰で私のクラスが監督に伝わったのですけれども。 「米、今から研ぐの? 俺手伝おうか」 気の利く兄弟(ヤマネコ)。二人は同じ動きで、水に浸けている白米を見つめた。ああ、そろそろ米を炊かないといけない時間。「それ、炊飯器に入れてくれる?」と尋ねると、双子は頷いて水ごと米を炊飯器に入れた。 「これ、研ぐんでしょ」 二人の声はなおも揃う。 「だっ、ダメー!」 今更米を掻きまわそうとする彼らの元へ走り、思わず両手で彼らの後ろ頭を叩いた。絵的には大阪のグ◯コの看板のようになってしまった。 「もう研いでるんだから! ボタン押すだけでいいの!」 「そ、そうなんだ」 ごめんごめんと謝る彼らに、プロテインを水で溶かしたものを入れた水筒を人数分差し出す。全く! 人気の漫画「オットコ飯」を読んだことないの!? 釜で研いだら痛むだろうが、と言いたい気持ちをぐっと抑えた。 「みのりん、ありがとうね」セクシーホクロ兄。 「カレー楽しみ」食いしん坊ホクロ弟。 彼らはニコニコしながら戻っていった。その背中を見送りながら、私は思案した。 双子の兄弟がヒロインを取り合うっていうのも、アリね。あ、でもそうなるとまるまる「タッ◯」だわ。
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