夏合宿と水着

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台車で人数分のエナジードリンクを運ぶ時も、ヘルメットをかぶってボール拾いする時も、考えるのは明日の海のことばかり。ああ、楽しみ。 いくら目の前できつい練習に瀕死の部員たちがいても、ニヤニヤしてしまう。 昨日後悔したのに、やはり私は夕飯を作り置きすると、給仕してあげることもなく帰った。店が閉まる前に飛び込まなければ。 夕方の真っ赤な日差しが痛い。蝉の鳴き声のシャワーを通り抜け、坂道を立ち漕ぎして自転車を飛ばしながら衣料品店に向かう。流石にスクール水着では恥ずかしい。例え私がモブ子だったとしても。 電気で明々とした店内は冷房が効き過ぎて、入った途端震えてしまった。鳥肌の立った腕を摩りながら前屈みに歩を進める。店の中のディスプレイは夏を涼しくお洒落に過ごす、テンションの上がりそうな服だった。作画のために目に焼き付けておく。 お目当ての水着コーナーも広く取ってあった。 スタイル抜群のマネキンは、それを着て浜辺に出れば男性陣の目を釘付けにしそうな際どいビキニを着ていた。これも作画のために脳内に記憶する。 もし美人マネージャーがいたとして、これを着ていったら……。うちの部員たちはどんな反応をするだろう。 脳内で想像しているとニヤニヤしてしまった。いけない、変態っぽく見えてしまう。変態だけど。 ハンガーに掛けてある色取り取りの水着を物色していると、間もなく閉店の音楽が流れてきた。ああ、全然見る時間なかった。こんな水着買ってるくらいなら、みんなの為にアイスでも買っていったほうが良かったのかもしれない。 でも、夏の思い出、私だって作りたい。 私は決心して、目を引いて離せなかったものをレジに持っていった。
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