夏合宿と水着

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翌日の午後。 部員は浜辺を大きなタイヤを裸足で引きずりながら走っていた。こんなこと、本当にするんだ。昭和の漫画の世界だけだと思っていた。 竹村先輩は大声で引きずりながら浜でこけているのに対し、忍者服部先輩は付いたわずかな足跡をタイヤで消しながら走行。 因みに海は学校の裏手にある。三年生の卒業アルバムではよくそこで写真撮影が行われているそうだ。 私は台車を押しながら何度も往復してエナジードリンクを補充した。地味に辛い。浜ダッシュより何か他に良い方法はなかったんだろうか。 「休憩〜!」 「だあああっ!」 監督の声に、全員が熱い砂に膝をついて崩折れた。 熱い竹村先輩、マイペース平原先輩、天然柏田先輩、西郷西木先輩は、ダッシュが始まってから既に上半身裸になっている。一番に脱ぎ捨てそうな千葉先輩は黒いシャツを着たままだった。一昨日私に言ったことを律儀に守ってくれている。 脱いでもいいですよ、と言ってあげたいけれど、その文言を口にするのは女子として憚られた。 そして私はというと、傘を差してピクニックシートの上に座り、大興奮を何とか隠しながらスマホで彼らの練習風景を撮っていた。 素晴らしい画像! 「ったく、余裕だなみのりんは」 西木先輩はガブガブと水分補給しながら文句を言った。 「そのドリンク作ってるの、私ですけど」 「すみませんでした」 空の2リットルのペットボトルを差し出され、どういたしましてと受け取った。透明の容器には大きく「西」と油性ペンで書かれている。 天然のセンター柏田先輩は野生の衝動に駆られたのか、海に走っていってダイブしていた。あの人は本当にいつでも楽しそうだ。人の2倍くらい満喫して生きてるんだろうな。羨ましい。 「そういや、みのりんは水着着てきたのか?」 菅野キャプテンの問いに、全員の注目が集まっているのを感じる。もう随分慣れたけれど、モブの私には刺激が強すぎる。 「き、着てきましたけど。ジャージの下……」 「ええーっ!? どんなの!?」 なぜか大喜びで竹村先輩が砂にヘッドスライディングしてきた。うわあ、もう砂まみれ。 「ど、どんなのって……」 皆の喉仏が大きく動くので、余計に緊張する。 「セパレートですけど……」
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